2014年8月6日~8月18日のぶらりキリマンジャロ登山&サファリ旅の記。将来、歳喰った時の為の備忘録としてココに記す。
【前夜までの「タンどう」】
登山DAY6。現地時間の8/13、午前5時35分。アタック開始から五時間半を経て、歩みを続けた登山道はキボ峰火口外縁のステラポイントに到達! 標高5,756m。しかし、アフリカ大陸最高地点はもう少し先なのだ。高度にして垂直に100m余り上の空を目指し、引き続き一歩ずつ歩みを進めていく。
変わらぬ暴風には、いつしか白くて冷たいモノが交じっており。
それが全身に纏う雪山装備を刺すように、これでもかと痛いほどの音を立てて襲い始めているのだった。
後発隊の我々四人組は、急登を登り切り、気が付けば歩みを止めて、平らな場所に立ち止まっていることにふと気が付く。
それはステラポイントだった。
まだまだ真っ暗闇の中。
ヘッドライトに照らされて初めてわかる「5,756m」の看板。
富士山と同じく。ステラポイントは、登山道と火口の縁が交わるポイント。
ここに到達できた時点で、一応はキリマンジャロの登頂成功の示す証明書が受け取れるのだ。
そう。アタック開始から五時間半を経て。ついに、我々後発隊が、一応は登頂を果たした瞬間だったのだ。
…。
しかし、あまりの寒さと、ここまでの辛さ、そして地表の半分以下となった酸素の影響なのか。どうにもその実感が湧いてこない。
二重にはめた手袋であっても、既に手指の感覚は失われ。
怒り狂ったような強風に煽られて、おいらは立ち止まっていることすらおぼつかない。しかし、幸いにして高山病の症状は出ておらず。意識は確かに、まだしっかりとあるようだった。
恐らくあと少し。アフリカ大陸最高地点、標高5,895mのキリマンジャロのテッペンまでは残り僅か。
無言の仲間達の脳裏には、それぞれの思いが巡り始める。
そう。思えば2012年春の偶然の出会い。
全くの登山初心者だった小さき者達の大きな夢。
憧れのテッペンに。2年半のトキは流れて、国内の色々な山に登り経験を積み、直前の富士山での高所訓練を経て。すべてはイマの為。あと僅かで叶うであろうそれぞれの想い。
…。
僅かな小休憩を経て、やがてガイドのアロンが再び歩みを進める。
日の出の予感を感じさせる薄暗さの空の目線の先には。恐らく頂上と思われる鋒が浮かび上がっている。
あそこだ・・・。
もう少しで叶う場所・・・。
…社会人一年目の2008年。
会社同期と共に、初めて登った富士山の下山後。
半ば以上にほとんど冗談でつぶやいた「オレ、次はキリマンジャロ登るわ」の一言。
一体全体、そんな単語を何処で覚えたのか。
周囲の誰もが。いや、自分自身でさえも本気にしてなかったあの一言。
地球の裏側に近いアフリカ大陸に行こうと「思う」こと自体、既に非日常体験であったアノ当時。
自宅と会社の行き帰りな毎日に、微塵の違和感も感じていなかったアノ時の自分にとっては。
TVで観る様な遠くて高い標高6,000mに近い世界に立とうと「思う」こと自体、それはもうもう文字通り、想像の枠を幾重にも超えた思いつき。
そしてその後、2012年春の偶然。
Webでたまたま見つけたツアー企画『初心者の方がゼロから始める登山-キリマンジャロ登頂への道』。
それまで、何となく「行けたらイイナァ」という、期限も切らない、よくある『夢』に描いた白黒のぼやけた夢が。この時から、「ひょっとしたら行けるカモなぁ〜」と淡く色づき始めた夢に変わり始め。
そして翌2013年の秋。初めての海外登山でマレーシア・キナバル山を登りきったとき。
冗談から始まる夢が、ついにハッキリとした形を持つ「目標」に変わっていたのだった。
それから約一年。2014年8月。
テッペンまで登りきれるかどうかはわからない。
けども、兎にも角にもテッペンに立つ為、リアルな一歩を踏み出すため成田を発った約一週間前。初めてのタンザニアに降り立ち、仲間と共に、自分の足を使って一歩ずつを繰り返す。
そのすべては、あの頂に立つため…。
…。
相変わらず意識はしっかりしてはいるものの、酸素不足からくる苦しさが一歩を踏み出す力を奪う。
斜度は大して急ではなく、地上であれば容易く登れそうな道。
しかし、最後の一歩一歩が重いのだ。
そうこうしているうち、ステラポイントから40分を歩いた場所で、東の空が赤く色づき始めていることに気が付いた。それは標高5,895mのアフリカ最高峰に新しい朝を告げる光。
「…もう、すこし・・・。」
左手に顔を向けると、朝焼けから身を隠すように濃青の空気に包まれた氷河の姿が目に入る。
「あ、あれが、氷河・・・。」
それは、遥か大昔の地球の記憶が目の前にある不思議な感動。
灼熱イメージのあったアフリカ大陸に、今自分がいることをうっかり忘れてしまいそうな感覚だった。
そして。
ステラポイントから約一時間。ついに。
2014年8月13日 現地時間 午前6時28分。
「CONGRATULATIONS」
今まで、それまでの人生で。
単なる言葉に、これほどの重さを感じたことはあっただろうか・・・。
6年前、富士山下山後に吐いた、単なる冗談という瓢簞から出た駒。
とうとう、目標の一つが叶った瞬間だった。
(音楽、♪エトピリカでお願いしますw)
…ということで、次夜以降、後日談編へ突入!
第60夜へ!